
近年、日本では温暖化の影響もあり、これまで栽培が難しかった熱帯・亜熱帯植物への関心が高まっています。カシューナッツの栽培は、日本の家庭菜園愛好家にとって新しい挑戦であり、熱帯の恵みを身近に感じる機会となるかもしれません。
本記事では、カシューナッツを種子から育て、実を収穫するまでの流れを丁寧に解説します。保存方法から発芽、苗の育て方、病害虫対策、収穫までの工程を網羅し、日本の気候における実践的なポイントもご紹介します。
カシューナッツの種子の保存方法【発芽率を保つコツ】

- 保存場所:直射日光を避け、涼しく乾燥した場所
- 湿度管理:湿気は大敵。密閉容器に乾燥材を入れて保管
- 保存期間:発芽率を維持するためには、4ヶ月以内の使用が推奨されます
カシューナッツの発芽方法と播種の手順【成功のポイント】
発芽率を上げるには、「吸水処理」が効果的です。
吸水処理の手順
- 常温の水に24〜36時間浸ける
- 水に浮かぶ種子は除去(発芽力が低い可能性)
- 吸水後はすぐに播種へ
播種のポイント
- 時期:春〜初夏(3〜6月)
- 土壌:水はけの良い砂質土。pHは5.5〜7.0程度
- 深さ:5cm程度に埋める
- 発芽温度:22〜27℃。10℃以下では発芽しにくい
発芽には2〜4週間かかるため、気長に管理しましょう。
発芽後の苗の育て方と管理方法【日当たり・水やり・肥料】

日当たりと温度
- 日光:6〜8時間以上の直射日光が理想
- 気温:20〜30℃が生育の適温。10℃以下で成長が止まり、0℃近くでは枯死の恐れ
水やり
- 土が乾いたらたっぷりと与える
- 鉢の底から水が流れるまでしっかり
- 受け皿の水は捨てること(根腐れ防止)
肥料
- 若木期:月1回、バランス型肥料(例:10-10-10)
- 成木期:開花・結実前にリン酸や亜鉛を含む肥料を補給
- 有機肥料もOK(堆肥、鶏糞など)
鉢植えのコツ
- ピートポットなど根を傷つけにくい容器で育てると移植が簡単
- 根詰まりを防ぐため、2〜3年に1回植え替えを
日本の冬に備えるカシューナッツの寒さ対策と剪定方法
カシューナッツは寒さに弱いため、日本の冬をどう乗り越えるかが鍵となります。
対策
- 地植えは沖縄や太平洋沿岸の一部地域に限定
- その他の地域では鉢植え+冬は室内管理が基本
- 室内でも霜や冷気を避け、窓際など温かい場所に配置
剪定の目的とタイミング
- 枝数をコントロールして風通しを良くする
- 実のつきやすいコンパクトな樹形にする
- 冬(落葉期)に本格的な剪定、夏に軽い剪定を行うカシューナッツの病害虫対策【予防と早期発見がカギ】

よく見られる害虫
アブラムシ、カイガラムシ、ボアラー(カミキリムシの幼虫)
主な病気
炭疽病、うどんこ病、疫病、葉斑病など
予防と対策
- 風通しをよくする
- 早期発見・除去(病葉や害虫)
- 必要に応じて自然農薬や石灰硫黄合剤を使用
カシューナッツの収穫時期と処理方法【殻の毒に注意】
カシューナッツは開花から2〜3ヶ月後に実をつけます。日本では9〜10月が収穫期。
収穫のサイン
- カシューアップルが赤や黄色に変色し自然落下
- ナッツ部分が灰色に変色している
注意
- カシューナッツの殻にはウルシオールという毒性油が含まれるため、生の状態では絶対に素手で触れないこと
- 加熱処理(ローストや蒸し焼き)を行ってから殻を割る
日本でカシューナッツの栽培に適した地域と気候条件
栽培に適しているのは以下の地域です
- 沖縄県
- 九州南部
- 太平洋沿岸(静岡以南)
- 瀬戸内海沿岸地域
ただし、いずれの地域でも冬の寒さや梅雨時期の湿気への対策は不可欠。日本全国での鉢植え栽培も可能ですが、温度管理と日当たりの確保が鍵になります。
まとめ|カシューナッツ栽培は家庭菜園の新たな挑戦におすすめ
カシューナッツは、日本の気候においてはやや難易度の高い植物ですが、その分育てる楽しみや達成感もひとしおです。種から始めて、数年後に自家製のナッツを収穫できたときの喜びは格別でしょう。
温暖化が進む中で、家庭菜園における植物の選択肢も広がっています。カシューナッツという熱帯植物を通じて、新しい園芸の楽しみを体験してみませんか?
